【開発デザイン室】プロンプトからループへ。日報で試す「AIへの任せ方」の話

おはようございます、こんにちは、こんばんは。
開発デザインの本井です。

以前このブログで「AI疲れ」の話を書きました。
「効率化はAIに任せて、ここ一番のこだわりは自分でやる」——あのときに引いた境界線は、今も自分の中に残っています。

ただ、あれから半年ほど経って、その境界線の引き方そのものが変わってきたな、と感じています。
今回はその話を、いちばん身近な「日報」を例にしてみます。

■気づいたら、呼び名が3回変わっていた

AIとの付き合い方につく名前が、この数年でどんどん変わりました。

プロンプトエンジニアリング → ハーネスエンジニアリング → ループエンジニアリング

横文字が並ぶと身構えてしまいますが、中身はとてもシンプルで、人間側の仕事がどこに移ったかという話でしかありません。

人がやることAIがやることひとことで言うと
プロンプトうまく頼む一度きり、答える頼む
ハーネス働きやすい場を用意しておく用意された場で動く任せる
ループ良し悪しの線を引く自分で直して、仕上げる見極める

順番に、日報で見ていきます。

■① プロンプト期:毎回、いい聞き方を考えていた

最初にやったのは、単純に「頼む」ことでした。

今日やったことをまとめて日報にしてください

出てきた文章を読んで、違うなと思ったら自分で直す。
翌日また同じように頼んで、また直す。

慣れてくると聞き方は上手くなります。「箇条書きで」「300字以内で」「所感を最後に」。
でも、毎日いい聞き方を考え直していることに、だんだん疲れてきました。
これがまさに、前回書いた「AI疲れ」の正体だったんだと思います。

■② ハーネス期:聞き方より、渡すものを整えた

次にやったのは、聞き方をやめて環境を整えることでした。

  • 日報のフォーマットを1つ決めて、置いておく
  • その日の打ち合わせメモとカレンダーを、まとめて渡す
  • 過去の自分の日報を何本か見せて、「この人の言葉づかいで」と伝えておく

これだけで、毎回の指示は「日報おねがい」の一言で済むようになりました。
上手い問いを考える代わりに、AIが働ける場を作ったわけです。

ずいぶん楽になりました。……でも、出てきたものを最後に読んで直すのは、やっぱり自分でした。

■③ ループ期:直すのをやめて、「合格ライン」を渡した

そして今やっているのが、ここです。

自分が毎回どこを直しているのか、よく見てみたんです。すると、直す場所はだいたい同じ3か所でした。
そこで、その3つを合格条件として書き出しました。

  1. 進捗が「何を・どこまで」で書けているか(“対応した” “進めた” で終わっていないか)
  2. 困っていること・相談したいことが1つ以上あるか(なければ「なし」と明記)
  3. 明日やることが、具体的な動作で書かれているか

そして、やり方をこう変えました。

  1. AIに日報を書かせる
  2. 同じAIに、その3条件で自分の文章を○×採点させる
  3. ×があれば直させて、また採点させる。全部○になったら止める

やってみると、これがちょっと不思議な体験でした。
自分が毎日していた「読んで、直す」を、AIが自分で回してくれる。
私がやるのは、最初に3条件を決めることと、最後にひと目通すことだけになりました。

特別なツールは使っていません。チャット画面ひとつでできます。
「書かせる → 採点させる → 直させる → 止める」。この4つがそろえば、それはもうループです。

■コツは、自分の「おかしいな」をループの形に翻訳すること

ループを作るとき、いちばん難しいのは合格条件を決めるところです。

ここで大事なのは、立派な基準を考えようとしないことでした。
出発点になるのは、AIの出力を読んだときに一瞬だけ浮かぶ、「……なんかおかしいな」という自分の感覚です。

うまく言えないけど、なんか違う。
薄い。他人が書いたみたいだ。読んでも結局何も残らない。

あの一瞬の引っかかりが、実は全部の材料でした。
ただ、そのままではAIに渡せません。「なんか薄い」では採点できないからです。
だから私がやっているのは、その違和感を、○×がつけられる言い方に翻訳する作業です。

例えば、こんなふうに変換していきました。

  • 「読んでも今日何が動いたのか分からないな」→ 何を・どこまで進めたかが書かれているか
  • 「これ、他人の日報みたいだな」→ 自分の言葉で書いた文が1つ以上あるか
  • 「困ってることが何も見えないな」→ 相談したいことが1つ以上あるか(なければ「なし」と明記)

左側はただの気分です。右側にすると、AIが自分で判定できるようになる。
この左から右への翻訳が、ループエンジニアリングの本体だと思っています。

そしてコツがもう一つ。最初から完成させないことです。
私も条件3つから始めました。数が少ないほうが回るし、直すべきところも見えます。

違和感は、放っておくと数分で消えてしまいます。
だから最近は、「あ、なんか違う」と思った瞬間にその一言だけメモしておいて、
週の終わりに1つずつ翻訳して、条件に足しています。
ループは作って終わりではなく、自分の引っかかりを拾っては足していくものでした。

正直、この翻訳作業がいちばんしんどいです。でも一度書けてしまえば、次からずっと使えます。
そして書き出してみて気づいたんですが、私は自分の仕事の良し悪しを、思っていたよりちゃんと言葉にできていませんでした。
毎日なんとなく感じていた違和感には、ちゃんと理由があった。それを見つける作業でもありました。

■変わったもの、変わらなかったもの

こうして並べてみると、この3つの移り変わりで何が動いたのかが、少し見えてきます。

変わったもの:

  • 人の仕事(問いを作る → 場を整える → 合格ラインを決める)
  • 疲れる場所(毎回いい聞き方を考える疲れ → 場を作り込む疲れ → 違和感を言葉にする疲れ
  • 上手い人の条件(プロンプト力 → 段取り力 → 自分の違和感を言語化する力

変わらなかったもの:

  • 「なんかおかしいな」と気づけるのは、人間だけだということ

条件さえ渡せば、AIは何度でも採点してくれます。
でも、その条件がまだ足りていないことに気づくのは、いつも自分の側でした。
任せる範囲がどれだけ広がっても、ここだけは一度も動きませんでした。

■おわりに|まず、日報1本から

ループエンジニアリング、と言葉にすると大がかりに聞こえます。
でも入り口は、「なんかおかしいな」と思ったところを3つだけ言葉にして、AIに採点させてみる——それだけです。

日報でも、議事録でも、メールの下書きでもいい。
小さいところで一度回してみると、「なるほど、任せ方ってこういうことか」が体でわかると思います。

そして面白いのは、これをやるとAIに詳しくなるのではなく、自分の仕事に詳しくなることです。
自分は何を良い仕事と呼んでいるのか。それを書き出す作業になるからです。

呼び名はこの先もまた変わるでしょう。
だとしたら追いかけるべきは新しい言葉ではなく、そのつど自分で基準を引き直せることなのかもしれません。

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